大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1440 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人村田善一郎の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。

弁護人村田善一郎上告趣意第一点について。

しかし記録を精査するに被告人が警察において強制され心にもない自白をしたと

認むべき何等の証跡がないそして公判廷において被告人が警察において述べた自白

は強制によるものである旨を供述しただけで事件の全体を通じて右自白が強制によ

るものであることを思わせぬ何等痕跡もない場合には右自白を強制による自白であ

るということはできないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(

れ)第二五三号同二三年七月一四日大法廷判決)又仮に警察における被告人の自白

が強制によるものであるとしても原判決は之れを証拠としたものではなく被告人が

第一審公判における自白を証拠としたものであつて右公判廷の自白が警察官の取調

に際して為した自白に一致するとしても右公判における自白は警察における自白の

影響を受けたと認むべき理由とはならない。そして警察官の強制による自白と同一

内容の自白を公判廷において任意になした場合において公判廷の自白を以て間接強

制による自白ということはできないことは当裁判所の判例とするところである(昭

和二三年(れ)第六一号同年一一月五日大法廷判決)論旨は理由がない。

第二点について。

しかし裁判所は被告人側の申請にかかる証人のすべてを取調べなければならない

というものでないことは当裁判所の判例の示すところである(昭和二三年(れ)第

八八号同年六月二三日大法廷判決)従つて原審においては弁護人の申請したAは喚

問の必要なしとして喚問しないのであるから何等違法はない。論旨は理由がない。

第三点について。

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裁判所は真実発見の為め努力しなければならないことは所論の通りである。しか

し証拠調の限度は原審の自由に決し得るところであつて、原審が其必要を認めざる

証人を喚問しないからとて法令に違背するとか刑事訴訟法の根本原則に反するとは

いい得ない。従つて原審において所論証人を喚問しないからとて何等違法はない。

そして原判決挙示の証拠により判示事実を認め得るものであるから虚無の証拠によ

つて被告人に有罪の判決を言渡したと非難する論旨は理由がない。

第四点、第五点について。

しかし原判決は判示事実は被害者提出の被害始末書、被害状況顛末書を補強証拠

となしこれと被告人の自白とを綜合して認定したものであつて被告人の自白を唯一

の証拠としたものではなく且つ右始末書、並に顛末書は補強証拠として極めて有力

なるものである。なお論旨は原判決は証拠説明を欠くと主張する。なるほど原判決

の書きぶりは必ずしも親切であるとはいい得ない、しかし原判決理由を通読すれば

挙示の証拠によつて判示事実を認めたことが明らかであるから所論の如き違法はな

く、論旨は理由がない。

被告人Bの上告趣意について。

論旨は結局原審の事実誤認を主張することに帰着する。しかしかかる主張は刑訴

応急措置法第一三条第二項により上告の理由とすることは許されないものである。

よつて旧刑事訴訟法第四四六条、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項によ

り主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 田中己代治関与

昭和二四年一〇月一一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

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裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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